ストーリー
今日に限って、梅雨は小休止。
放課後の廊下は青春の音に満ちている。
奏でているのは実にさまざまな、無数の部活たち。
俺も、部室に向かっていた。
『廃部申請書』を手に持って。
もうすぐお別れとなる慣れ親しんだ部室に居たのは、見慣れぬ一人の少女。
俺の未完成の原稿を読んで、楽しそうに微笑んで──そうして、俺を見つけて、距離を詰めてきて、言い出した。
「2年A組、桧ノ原つぼみ。
創説部に入部します」「どうしても続きが読みたいんです! 私、先生の作品の──先生のファンなんです!」こちらをまっすぐ射る眼差しは、まるでサーチライト。
キラキラ輝く眼差し。
夢を見る瞳。
抗えないひたむきな気持ちに心を動かされ、俺は桧ノ原の提案に乗った。
──こうして、創作と取材と青春と恋の夏が幕を開けるのだった。