ストーリー
中原空は母親の療養の為に都心を離れて「猫鳴町」に引っ越してきた。
磯の香りとどこか懐かしい匂いのする町並み。
何もないけれど、なぜか温かい。
でも何も変わらないと思っていた……
深夜、空は海辺で大塚病院に入院している少女と出会う。
尊大な態度と不思議な雰囲気の彼女に、どこか懐かしさを覚える。
次の日、母の見舞いにやってきた空は、白昼の中庭で彼女と再会する
すこし驚く空に向って、
『私がお前の友達になってやる』
と強引に空に宣言をしたのだった。
友達という関係に複雑な思いを抱きながらも空は心に温かさを感じる。
二人は周りの少々癖のある住人を巻き込みながらも交流を深めあっていく。
陰のあった空の心境も徐々に明るくなっていく。
目にも見えず言葉にもしにくい奇妙な関係を築いて……。
幸せを感じ始めたとき又世界が変わろうとしていた。
二人が出会った時、捻れ曲がった複雑な運命は交差する。
忘却の運命は彼らを翻弄するのか導くのか……。
出会いのもたらす数奇な軌跡の行く末は―――
『人の手は繋ぐ為にある』
儚くて懐かしい、暑い夏のちょっぴり不思議な物語。